広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
入試問題を解く際、多くの受験生は「本文を読み、問いに答える」というシンプルな作業をしているように思えます。
しかし、実際にはその裏側に、平均点を形づくる非常に巧妙な“仕掛け”があるのです。
選択肢問題や記述問題には、「受験生をふるいにかける」ための作問技術がちりばめられています。
今回はその技術をいくつか紹介し、なぜそれを知ることが受験勉強において重要なのかを考えてみましょう。

誤答肢の罠
以前にご紹介した誤答肢の罠、せっかくなので一部をご紹介します。
誤答肢は、主に以下のような「引っかかりやすいパターン」に基づいて作成しています。
① 因果の転倒(原因と結果を逆にする)
② 主語と目的語の入れ替え
③ 対比構造の誤認
④ 本文に書かれていない内容を勝手に補う
⑤ 副助詞のズレによって
⑥ 関係のない情報同士を強引につなげる
⑦ 指示語の指す内容が間違っている
⑧ 日本語として意味が通らない
⑨ 本文と明らかに矛盾する内容
⑩ 本文の大事な要素が抜けている
⑪ 記述として正しいが、設問の要求とズレている
⑫問いに答えるうえで決定的に重要な要素が不足している
これらは、本文の読みがあいまいだったり、問いに丁寧に向き合っていないと、誰もがつまずく可能性がある落とし穴です。
つまり、受験生の「つまづきポイント」を逆算して設計されているのです。

条件付けの罠
記述問題にも巧妙なフィルターが組み込まれています。
特に、条件設定によって“問いを読んでいない生徒”をふるい落とす技術を用いることが多いです。
①「使う語句」「使わない語句」の指定で、設問を読んだかどうかを判断
② 字数が多めの記述で、同じ内容を繰り返してしまう生徒と、必要な要素を正確に抽出できる生徒を区別
③ 字数が少なめの記述で、本文の言葉を写すだけの生徒と、それを抽象化・言い換えできる生徒を区別
④ 解答範囲を明示し、その範囲外を書いた生徒と、範囲内の要素のみで書いた生徒を区別
こうした設計は、「設問を注意深く読み、求められている条件に合わせて答えを作る力」があるかどうかを見ています。

具体的方針をもった演習を
このような作問技術を知って問題に向き合うのと、知らずに対症療法的な演習を繰り返すのとでは、学習の質がまったく変わってきます。
敵の手の内を知っておくことは、試験という戦いにおいて明らかな優位を生みます。
とはいえ、これらの技術を活かすには、大前提として本文の読解が精確であることが求められます。
道具は、それを使いこなせる腕があってこそ武器になるのです。
国語の問題は、ただ「感覚」で解くものではありません。
出題者の意図を読み取って問いを俯瞰し、設問の仕掛けを見抜く。
作問技術を知ることは、そのための視座を持つということなのです。