広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
読解力の基礎には、「要約力」があります。
要約とは、本文の構造をつかみ、主張と補助情報の関係を整理する作業です。
これができると、どの段落が全体の骨格を担い、どの情報が補助や例示の役割を果たしているかを判断できるようになります。
要約とは“問題を解く前提”ではなく、“文章を読めたと言える状態”を形にする行為です。

要約が示す読みの粗さ
多くの生徒が、要約でつまずきます。
・要点を絞れず、全体をなぞっただけの内容になる
・文を短くすることが目的になり、意味が抜け落ちる
・段落の区切りに従って書くだけで、整理になっていない
これは、文章を読んでいるようで「情報を並べて受け取っている」状態であり、「どういう意図で書かれているか」を把握する訓練が不足していることを示しています。
設問に答える段階では見過ごされがちですが、要約という形でアウトプットさせると、その読みの粗さが露わになります。

要約力の鍛え方(読み)
要約力を養うには、文章の読み方を具体的に変更する必要があります。
・レトリックに着目する
言葉の工夫に着目することで、読み方に強弱をつけていきます。
たとえば、「AではなくB」「AだけではなくB」「Aとは定義」など、用いられているレトリックに注目することによって、文章の要点がつかみやすくなります。
しかし、杓子定規に言葉にマーキングしていると、「しかし、そうではない」といった中身のない文章にも線を引くことになり、要点が見えづらくなります。
ただ、文章がまっさらできれいなままであるより、レトリックに注目をしてとにかく文章を汚していくことの方が思考につながります。
そこから、内容に沿ってマーキングする箇所を絞っていくのです。
・段落ごとの役割とそのつながりを意識する
各段落がどのような位置づけで存在し、どの段落と連携して意味を持っているのかを確認することで、全体構造が明らかになります。
このようにして、文章を「意味の塊」として構造的に把握する読み方が要約の基礎になります。

要約力の鍛え方(書き)
読み方と同時に、書く技術も鍛える必要があります。
現古館では、次の2つの方法を、生徒の特性に応じて使い分けます。
・書きやすい字数を決めて訓練する
文章によって「要約に必要な字数」は異なりますが、それよりもその生徒にとって書きやすい字数はどれくらいの分量なのかを見極めます。
200字、400字、600字…。
情報の取捨選択は、生徒の到達段階によって精度が異なるものです。
要素を詰め込み過ぎる癖のある生徒には、初めは多めの字数で要約してもらえばよいのです。
そこから削るならどこかを判断してもらえば、出来上がる要約のクオリティは変わらないはずです。
逆に抽象化しすぎる生徒には、加えるならどの情報かを判断してもらえばよいわけです。
全生徒に、初めから同じ字数で要約をしてもらう必要などないのです。
・一文一意の原則で、論理を積み上げる
一度にまとまった字数の論理的な文章を書ける生徒はほとんどいません。
ですから現古館では、一文に一つの意味を込め、それを積み重ねるように構成する訓練を行うことが多いですね。
一度に200字が難しければ、一文を積み重ねていけばよいのです。
そうすると、論理の飛躍にも気づきやすくなります。
具体的方針をもって、生徒の特性にあった仕方で行われる要約の訓練には、絶大な効果があると私は考えています。