
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
しばらくホームページがおなくなりになっており、ご迷惑をおかけしました。
新年度に入りましたので、2024年度の大学入試の結果について簡単にご報告いたします。
大学入学共通テスト平均点:152点(6名の平均)
進学大学:早稲田大学、神戸大学、山口大学、龍谷大学、広島修道大学(1名浪人)
それぞれ、自分の頭で考えて決断した進路です。
皆さんの学びの道程が豊饒なものになることを願っています。

さて、小学校から中学校へ、中学校から高校へとステージが変わると、国語の試験でショックを受けることが増えると思います。
「できたつもり」が大幅な減点をくらっている。
ステージの切り替わりに多いご相談ですから、いくつかその原因を示しておきます。
原因①文章の読み方が身についていなかった
これは仕方のない部分もあります。
文章の内容理解を問ううえで、最も入り口の部分にあるのが「書き抜き問題」という形式です。
問われた内容に対する答えにあたる部分を、文章からサーチしてそのまま書き写して提出すること。
問われた内容と、その答えにあたる部分が理解できていなければ、適切な箇所をもってくることはできませんから、もちろん大切な設問です。
しかし、傍線部の近くをなんとなく字面読みして、何となく制限字数に近い部分を書き抜いたら正解になってしまった、ということが往々にして起こる設問形式でもあります。
傍線部の近くにある箇所では指定字数に合わず、それを具体・抽象関係で言い換えた箇所が遠くにある。
こういった箇所を出題するだけで一気に正答率が下降する、シンプルでありながら奥深い設問形式ですが、低学年にこういった出題をしてしまうと、平均点がとんでもないことになるんですね。
ですから、学年が低いうちは、傍線部の近くをなんとなく読んでいれば解答できてしまう、といった問題が多く出題されてしまい、自分の国語学習の習熟度を誤認してしまうということが起きます。
何となく解けてしまっているだけで、文章の読み方は身についていないし、そもそも文章の内容を理解できてもいない、という段階です。
ですから、次のステージに進んで「きちんと」取れなくなっているというだけなんですよね。

②問題の解き方を知らなかった
文章の内容はある程度つかめていても、問題の解き方を知らないから苦労する、こういう段階もあります。
例えば、選択肢問題。
一度、自分で問いに対する想定解を作ったうえで選択肢を読み始めているでしょうか?
選択肢問題の誤答の作られ方、知っているでしょうか?
例えば、記述問題。
傍線部近くのそれらしい箇所を合体させるだけの、文法も無茶苦茶な解答を作っていませんか?
同じ内容を表現を変えて繰り返しているだけの解答を作っていませんか?
書いている解答は「問い」と対応したものになっていますか?
「解き方」と一口に言っても、具体化するとたくさんの注意点があります。
それを知ったうえで、意識した解答を作成できているでしょうか。
小学校から中学校、中学校から高校と、ステージが上に上がるたびに、問いも採点基準も複雑化します。
前のステージと同じ感覚で、なんとなく解いていると、なんとなく得点が下降していくのです。

③扱われる概念、テーマ、語彙を知らない
基本的な文章の読み方、問題の解き方の作法は、学年問わず共通しています。
現に現古館では、表現を変えてはいますが、全学年に同じことを伝えています。
国語学習の基本的な考え方を身に付けたうえで、それでも壁を感じているなら、ここが原因です。
例えば、ある程度国語学習を重ねてきた高校生であれば、「ナポレオンが~」という書き出しを読むとすぐに、「国民国家がテーマの文章だろう」と想像することができます。
しかし、そもそも「国民国家とは何か」を知らない生徒は、当然文章の内容を理解することができないでしょう。
また、自分とはかけ離れた年齢、属性の主人公の心情が、現代とは異なる価値観をもつ時代背景のもとで描かれた小説を、読書経験もなく、テーマについての知識もない生徒が読んで理解できることもないでしょう。
そもそも「知らない」。
絶対的な読書量、演習量の欠如に起因した壁ですね。
新学年ギャップは、様々な要因によって生じるものです。
自分がどの段階で躓いているのか、早期に判断して対策を練りましょう。